研究課題
大動脈瘤・大動脈解離は大血管の破裂により死に至る重篤な疾患であるが、病態の分子メカニズムはほとんど分かっていない。本研究では瘤で多く見られるマクロファージとIL-6に着目し、IL-6によるマクロファージ機能分化制御と分化マクロファージの瘤における役割について検討してきた。大動脈瘤についての検討マウス大動脈周囲にCaCl_2を塗布して腎動脈下大動脈瘤を発症するモデルを用いた(Caモデル)。平成22年度の研究成果から、CaモデルではIL-6系シグナルであるSTAT3の発現・活性化と瘤の進展に相関関係があることが示唆された。そこでマクロファージのIL-6系シグナルが亢進するマクロファージ特異的SOCS3ノックアウトマウス(mSOCS3-KO)で瘤モデルを作成したが、野生型と同程度に瘤が形成された。マクロファージIL-6シグナルの亢進は瘤病態に影響しないことが明らかとなった。大動脈解離についての検討Caモデルでは野生型とmSOCS3-KOに差がなかったため、アンジオテンシンIIを投与(Ca+Ang IIモデル)して負荷を追加した。Ca+Ang IIモデルでも野生型とmSOCS3-KOに同程度の腎動脈下大動脈瘤が形成された。しかし予想外なことにmSOCS3-KOでのみ、腎動脈上大動脈の大動脈解離を来していた。組織像では突然の中膜断裂と偽腔形成が見られ、ヒト解離をよく再現していた。解離部位にはマクロファージの浸潤、STAT3の発現・活性化が見られた。以上より、マクロファージIL-6シグナル亢進は瘤には影響しないが解離を発症させることが示された。発症機序の解明という点から、解離は瘤以上に遅れをとっている疾患である。今回の成果をもとに、マクロファージIL-6シグナルと解離の発症メカニズムについての検討を継続する。
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Atherosclerosis
巻: 216 ページ: 307-12