近年、COはミトコンドリアに作用して代謝を抑制し、抗炎症や抗アポトーシスの効果を持つことが明らかとなり、メディカルガスとして注目されている。そこで今回、COとO2の混合ガスを用いて高圧乾燥保存法にてラット心臓を保存し、移植蘇生させ、条件を検討した。ドナーラットの心臓を摘出後、高圧用チェンバーに入れ、COとO2の混合ガスを各圧力(7000、5000、3500、2500hPa)と各分圧比の条件で充填させ、4℃にて24、48時間保存した。Controlには摘出直後の心臓を用いた。それぞれの心臓をレシピエントラットの頚部に異所性心移植を実施し、一週間後の生存率を検討した。条件決定後、移植直後と1週間後に、fluorodeoxyglucosを用いたpositronemission tomography(FDG-PET)により、それぞれの心臓を機能的に評価した。 7000hPa(PCO=4000hPa+PO2=3000hPa)では、蘇生率は100%(11/11)だったが、1週間後の生存率は72%(8/11)だった。3500hPa(PCO=2000hPa+PO2=1500hPa)の蘇生率は100%(7/7)だったが、1週間後の生存率は28%(2/7)だった。3500hPa(PCO=1500hPa+PO2=2000hPa)では、蘇生率、1週間後の生存率ともに100%(8/8)であった。これらの結果から、COとO2混合ガスを用いた高圧保存法におけるラット心臓保存では、3500hPa(PCO=1500hPa+PO2=2000hPa)が適していることが示唆された。FDG-PET解析により、48時間保存群の心臓ではFDGの集積は低かったが、Controlと24時間保群には有意差が認められなかった。これらの結果から、COとO2混合ガスを用いた高圧乾燥保存法において、48時間保存後では心臓にダメージが残るものの、24時間保存後では、Contorol群と比較しても機能が温存することが明らかになった。本実験で、COとO2を用いた高圧乾燥保存法は、ラット心臓に対して、より適した圧力と分圧比がわかった。また、皮膚の上から拍動を確認する生存率による評価だけではなく、PETによる機能的評価をしたことで、より厳密なエンドポイントがわかり、24時間保存では機能温存が示唆され、高乾燥保存法の確立に近づいたと考えられる
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