研究課題/領域番号 |
22791266
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研究機関 | (独)国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
畑山 直之 (独)国立成育医療研究センター, RI管理室, 共同研究員 (80534792)
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キーワード | 臓器保存 / 移植・再生医療 / 高圧 |
研究概要 |
平成23年度は、COとO_2の混合ガスによる高圧保存法で保存したラット心臓を、頸部異所性心移植し、(1)心臓の機能評価、(2)マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。また、同様の方法で(3)ラットの四肢保存を試みた。 具体的内容;(1):移植から30日60日100日というポイントでそれぞれ心臓の拍動、重量を測定し、HE染色により組織学的評価を行った。移植後30日では、Control、24時間、48時間保存群に明らかな差は見られなかったが、60日後には48時間保存群の心臓重量、心拍数が減少し、一部に線維化が認められた。移植後100日では、48時間保存群の心臓重量、心拍数が明らかに減少したが、24時間保存群はControl群と比べて優位な差はなかった。(2):発現解析ソフトGene Springを用い、発現データの二次元クラスター網羅的遺伝子発現解析を行った。Control群、CO保存群、そしてN_2保存群(陰性対照群)それぞれの群を比較してCO保存に特異的な候補遺伝子を100数十個見つけた。そのうちControl群と比較した発現増強遺伝子が107個、発現減弱遺伝子が50個であった。(3):心臓と同様の方法でラット後肢を1週間保存し、再接着(移植)を行った。現在、機能評価を進行中である。 意義・重要性;(1):COとO2の混合ガスによる高圧保存法によって24時間保存した心臓が機能的にControlに劣らないことを示した。(2):今回明らかとなった特異的な発現遺伝子の機能を調べることで、我々の保存法のメカニズムの一端を解明することができる。(3):心臓と同様の方法で四肢の保存が可能であることを明らかにし、我々の保存法の適応を広げていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧保存法におけるラット心臓の保存・機能評価、メカニズムの検討のデータは概ね順調に進んでおり、ラット四肢保存移植の結果も踏まえ、高圧保存法の確立・機序解明についておおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、i:マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析で、今回明らかとなった特異的な発現プロファイルと保存効果との関係性を検証するため、real time RT-PCRによる検討を行う。さらにmRNAの発現プロファイルを整理、比較検討し、病理学的変化および生化学マーカーの変化との関連性について解析を行い、メカニズムの一端を解明する。ii:ラットの四肢保存では、さらに検討を踏まえ、保存肢の組織的・分子的な評価、移植後の機能的な評価を検討し、高圧乾燥保存法の適応を広げ、この保存法の更なる確立・機序の解明へと繋げたい。また最後の年である平成24年度は、前半に不足しているデータをしっかり揃え、後半はそれぞれのデータをまとめ論文に投稿していく。
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