研究課題
昨年度の成果、大腸癌HT29細胞をヌードマウスに移植する際、正常マウス胎仔腸管間質線維芽細胞(Intestinal embryonic fibroblast ; IEF)と共に移植すると、Foxf2 KOマウス胎仔IEFと共に移植した場合より、顕著な癌細胞増殖支持作用があることが明らかになった。今年度は、その増殖支持作用に関わる分子の同定を試みた。まず、移植された部位を切除し、コラーゲナーゼ処理をして、浮遊細胞にし、サイズの大きい上皮細胞を除いた。残りの間質と想定される細胞からRNAを抽出した。同様な操作を、Foxf2 KOマウス胎仔IEFと共にHT29細胞を移植した部位にも施し、間質細胞からのRNAを得た。この2つのRNAをDNAマイクロアレイにかけて、Foxf2 KOマウスIEFと共移植した間質RNAの発現に比し、正常マウスIEFと共移植した間質RNAの発現が大きなものが23個あった。それらのうち、消化管上皮細胞の増殖に関わっているWnt5aに注目した。まず、定量的RT-PCR法で、正常マウス由来の共移植組織間質からのRNAとFoxf2 KOマウスからのそれを比較した。前者が後者の20.9倍であることが判明した。そこで、Wnt5a発現ベクターをマウスNIH/3T3細胞に遺伝子導入し、Wnt5aを過剰発現している細胞株を3種類得た。HT29細胞単独、HT29細胞プラス正常マウスIEF、そしてHT29細胞プラスWnt5a過剰細胞をヌードマウスに移植して10週後の腫瘍サイズを計測した、野生型IEFを混合移植した場合は単独移植の3.0倍であり、Wnt5a細胞混合移植の場合は単独移植の8.9倍であった。この結果は、IEF間質細胞の癌細胞増殖支持作用の1つはWnt5aを介して行われていることを示唆している。
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Biochemica Biophysica Res Commun
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