胆管癌は化学療法や放射線療法には治療効果が認められず、手術で切除する以外には有効な治療法はない。手術療法だけによる胆管癌の治療には限界があり、新たな治療法の開発が必要である。 本研究の目的は生理的活性を持つ小分子化合物であるビサボロールによる新規癌治療法を開発し、治療成績を向上させることである。 (1)ヒト由来癌細胞株を用いたビサボロールの機能解析 ヒト由来癌細胞株に対するビサボロールの投与により増殖能の抑制、アポトーシス誘導能を確認した。至適濃度は癌細胞株によって異なっており、250から500μMであることを明らかにした。 (2)ビサボロールの基礎的研究 ヒト由来癌細胞株へのビサボロール投与群と非投与群のDNAアレイ法による網羅的遺伝子解析を行った。生存に関するPI3T-AKTシグナル伝達系などが、ビサボロールの作用に関与していることを明らかにした。 (3)担癌動物モデルを用いたビサボロールの有効性の検討 ヌードマウスに対してヒト由来癌細胞株を移植した皮下発癌、腹膜播種モデルを作成し、ビサボロール投与群と非投与群における抗腫瘍効果について検討した。皮下発癌モデルのビサボロール投与群において増殖抑制効果を認め、腹膜播種モデルのビサボロール投与群においても、腹膜播種の減少を認めた。 ビサボロールは抗腫瘍効果を有しており、その作用機序の一部を解明した。研究を進めることにより、ビサボロールを用いた新規癌治療法の開発が可能となり、治療成績の向上が期待される。 以上の点より本研究は意義のある研究と考えている。
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