研究概要 |
胆管癌は化学療法や放射線療法には治療効果が認められず、手術で切除する以外には有効な治療法はない。手術療法だけによる胆管癌の治療には限界があり、本研究の目的は生理的活性を持つ小分子化合物であるビサボロールによる新規癌治療法を開発し、治療成績を向上させることである。 ビサボロールは膵癌細胞株KLM1,KP4,Panc1,MIA Paca2において細胞の増殖を抑制し、アポトーシスの誘導を亢進させたが、膵上皮由来細胞株ACBRI515においては明らかな効果を認めなかった。膵癌皮下発癌マウスモデル、腹膜播種マウスモデルにおいて週1回3週連続経口投与を行った。いずれのモデルにおいても投与群は非投与群と比較して有意な抗腫瘍効果を認めた。またビサボロールの作用機序としてPI3K-AKTシグナル、EGRIの関与をウェスタンブロティング、免疫染色にて明らかにし、その成果を報告した(Antitumor effectsuofua-bisabolol against pancreatic cancer. Seki T, Itatsu K, Nagino M et al. ; Cancer Sci. 2011 Dec ; 102(12) : 2199-205.)。 網羅的遺伝子解析により同定したビサボロール投与により発現亢進する遺伝子を恒常的に抑制した癌細胞株を樹立しており、それらの細胞を用いた増殖能、アポトーシス誘導能についても検討した。 ビサボロールは抗腫瘍効果を有しており、現在臨床試験の準備を行っており、研究を進めることによりビサボロールを用いた新規癌治療法の開発が可能となり、治療成績の向上が期待される。 以上の点より本研究は意義のある研究と考えている。
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