研究概要 |
ビサボロールは膵癌細胞株において細胞増殖を抑制し、アポトーシスの誘導を亢進させる機能を持っていた。また膵癌皮下発癌マウスモデル、腹膜播種マウスモデルへの週1回3週連続経口投与により投与群において有意な抗腫瘍効果を認めた。ビサボロールの作用機序としてPI3K-AKTシグナル、EGR1の関与を明らかにし、その成果を報告した(Antitumor effects of α-bisabolol against pancreatic cancer. Seki T, Itatsu K, Nagino M et al.; Cancer Sci. 2011 Dec;102(12):2199-205.)。今年度はビサボロールの機能として浸潤能について検討した。ビサボロールは膵癌細胞株KLM1, KP4, Panc1, MIA Paca2において癌細胞の浸潤能を抑制させる機能を有していた。網羅的遺伝子解析により同定したビサボロール投与により発現亢進する遺伝子を恒常的に抑制した癌細胞株を樹立しており、それらの細胞を用いた浸潤能の検討をさらに行った。その結果、増殖能、アポトーシスの誘導に関与していた遺伝子と浸潤能には関連がないことが明らかになった。浸潤能のメカニズム解明のためPCRアレイ法により浸潤転移能に関連する84の遺伝子について解析を行った。複数の遺伝子の誘導を確認しており、現在機能解析を継続中である。またビサボロールの誘導体を44種類作成し、その増殖能、アポトーシス誘導能の検討により、5種類の有用な誘導体を開発した。現在ビサボロールの臨床試験の準備を行っており、さらに研究を進めビサボロールを用いた新規癌治療法の開発による治療成績の改善をめざす。
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