研究概要 |
癌幹細胞(CSC)は癌の根源となる細胞であるため、これらの癌幹細胞を標的とすることにより癌の根治が可能であると考えられている。われわれはこれまでに、肝細胞癌(HCC)においてCD13陽性細胞が癌幹細胞としての性質を有し、また活性酸素種(ROS)のスカベンジャー経路に関わることで、治療抵抗性等を示すと考えた(The Journal of Clinical Investigation. Volume 120, Number 9. September, 2010)。またこれらの結果から、CD13が単に癌幹細胞の表面マーカーのみならず、CD13自身が未知の機能を持ち合わせており、その機能によってCD13を発現している細胞が癌幹細胞様の性質を発現もしくは獲得しているのではないかと考え、これらを検証する目的で、CD13陽性細胞の腫瘍内での局在や発現様式・臨床病理学的特徴との関連について現在研究を進めている。 当院での肝切除症例83例のパラフィン切片を免疫染色しCD13の発現を調べた。このCDI3の発現形式としては、「細胞質が染まるパターン(40%)」・「細胞膜全体が染まるパターン(23%)」・「毛細胆管の様に細胞間隙が染まるパターン(100%)」といった3つのパターンに分類できた。一方これら発現パターンと「患者因子」・「腫瘍因子」および「予後(無再発生存率・全生存率)」との関連は残念ながら見出せなかった。また全例に発現を認めた「毛細胆管の様に細胞間隙が染まるパターン」では、癌の分化度との関連がある可能性を認めた。 今後は更に詳細な検討と、CSCを更に明確に同定できるマーカーの検索を行い全く新しい治療法の開発を目指している。また肝臓癌における幹細胞発癌を解明し、幹細胞における遺伝子変化を解析することにより、発癌リスク診断や発癌予防薬の開発に繋がるものと思われる。
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