胆道癌は胆道閉塞と黄疸、胆管炎を伴うため、ドレナージや胆道拡張術を施行しながら治療を行うことが必要になる。このことから、本研究では胆道癌における化学療法抵抗性に関して、胆道炎症をからめて探ることを目的とした。本研究は細胞実験が主体であるが、背景となる「非切除」または「遺残のある切除」と化学療法に関する治療成績の論文が殆どなく、検討を追加した。外科紹介例では、「非切除」が3割、「遺残のない切除」が2割を占めており、治療成績は「遺残のある切除」の方が良かった。おそらく胆道ドレナージが効率化され、胆道炎症が少なく、予後が改善されたと考えられる(胆道学会、肝胆膵外科学会で報告、J Surg Oncolに採用)。また、「遺残のない切除」でも5年生存率は約5割で、何らかの補助療法が必要と考えられた。しかしながら、手術治療は大量肝切除が主体で高度侵襲を伴うため、術後補助療法は非手術例の7割しか投与できないことが前向き試験で分かった(胆道学会、ASO-GIで報告、J Cancer Therに採用)。以上の結果は2つのことを意味する。すなわち、胆道炎症や閉塞を伴う場合治療成績が劣ること/手術前の非効率的な胆道ドレナージ中でも化学療法が必要となること、である。 続いて、胆道癌細胞株と切除標本を用いて、胆道癌における炎症の状況を把握するために、炎症性サイトカインの発現を検討した。炎症性サイトカインのうち予後との関連性が示唆されているものはIL-6とTGF-betaであり、胆道癌細胞株4種類と切除標本で両者の発現を確認した。特に切除標本では先進部や転移巣で高発現であった。また、両サイトカインのレセプターの発現を確認し、IL-6とTGF-betaを投与したところ、cross-talk様に、すなわち相互的に作用し分泌を促すことが明らかになった。また、両サイトカインにより、多剤に対する化学療法抵抗性を誘導することが明らかになった。すなわち、胆道癌ではIL-6とTGF-betaがcross-talk様に作用しており、化学療法抵抗性を誘導することが分かった。また、主たる経路はSmad4に関連している可能性が示唆された。以上の結果は外科学会、消化器外科学会で発表予定である。
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