胃癌細胞株MKN45を用い、5-FU耐性株MKN45/F2R、オキサリプラチン耐性株MKN45/L2R、CPT-11耐性株MKN45/C2Rを樹立した。また、食道癌細胞株TE13を用い、オキサリプラチシ耐性株TE13/L10Rを樹立した。抗癌剤の感受性については、それぞれの耐性株はMTTアッセイにて親株と比較し20~160倍程度の強い耐性を獲得していることを確認した。引き続きその他の抗癌剤を用い、耐性株を作成中である。 現在親株と樹立した耐性株のマイクロアレイを行い、それぞれの遺伝子発現パターンを解析した。親株との比較では、変動倍率2.0にて有意に変化している遺伝子は、MKN45/F2Rで302遺伝子、MKN45/F2Rで480遺伝子、MKN45/C2Rで633遺伝子を認めた。TE13/L2Rにおいては変動倍率5.0にて458の有意に変化している遺伝子を認めた。5-FUに関しては5-FU代謝酵素、オキサリプラチンに関してはDNA修復、CPT-11に関してはトポイソメラーゼ、また各耐性株に共通するものとしてMDRをキーワードに遺伝子の絞り込み検索を行い解析中である。 質量分析計を使用し、親株、耐性株に抗癌剤を投与し、細胞内の分子応答を解析した。胃癌細胞に5-FU、CDDP、CPT-11、Paclitaxelを投与し経時的にアミノ酸の変化を観察した、5-FU、CDDP、CPT-11においては投与後に特定のアミノ酸の増加が観察され、paclitaxel投与時には観察されなかったことから、DNA標的抗癌剤投与による細胞内応答に特定のアミノ酸が深く関与していることが示唆された。また抗癌剤の種類により細胞内応答が異なり、この検出に質量分析計は有用である。
|