我が国では、肝細胞癌(HCC)の発生主因の一つとされているC型肝炎ウィルス感染者が多数存在しており、HCCに対する新たな診断・治療薬の開発が切望されている。本研究では肝内再発に対する再発予測システムの開発を行う。 1)再発関連遺伝子の同定と検証 マイクロアレイ解析より得られた肝細胞癌(HCC)再発関連遺伝子を定量的real-time PCR (qPCR)により検証したところ、3つの再発特異的なup-regulated遺伝子、5つのdown-regulated遺伝子の同定に成功した。また、マイクロアレイ解析及びqPCRによる検証から、肝細胞癌の分化度やステージで発現に変動の見られず、中程度の発現量を示す新たなリファレンス遺伝子として2遺伝子の同定に成功した。 2)再発関連遺伝子のDNA異常の解析 上記1)にて同定した再発関連遺伝子について、プロモーター領域のCpGアイランドの有無を解析したところ、3つの遺伝子のプロモーター領域にCpGアイランドが確認された。それぞれの遺伝子につき2箇所のメチル化特異的PCRを行うためのプライマーを設計し、条件検討を行いMSP条件を確立した。再発関連遺伝子のABCB6については、遺伝子の増幅・欠失に関するコピー数多型(CNV)解析をqPCRによって検証したが、遺伝子の増幅・欠失は観察されなかった。また、再発関連遺伝子のプロモーター領域をダイレクトシーケンスしたが、再発特異的な変異を見出すことはできなかった。 再発関連遺伝子として同定したABCB6の肝細胞癌及び肝臓組織におけるmRNAレベルとDNAメチル化レベルとを組み合わせての術後2年以内の再発予測性能は、ROC曲線解析の結果、曲線下面積0.88、感度86%、特異度100%と高い性能を示した。
|