研究概要 |
NELF (negative elongation factor)はRNA polymerase IIによる転写伸長を阻害することで、転写を調節するが、RDBP (RD RNA binding protein,別名NELF-E)はNELFのsubunitの1つで、この転写制御で重要な役割を演じる蛋白である。我々はDNAマイクロアレイデータにより、HCV陽性肝細胞癌(以下HCV-HCC)で発現が亢進している遺伝子としてRDBPを同定しており、今回、HCV-HCCの進展における発現を検討した。 当科で肝切除されたHCV-HCC57例についてreal-time RT-PCR法を用いて癌部と非癌部におけるRDBP mRNAの発現を解析した。またHCC93例に対し、免疫染色で癌部と非癌部におけるRDBP蛋白の発現を解析し、癌部での発現率と分化度、門脈浸潤、1年以内肝内再発の有無等の臨床病理学因子について検討した。 RDBPはmRNAおよび蛋白レベルで、非癌部に比べ癌部で有意に発現亢進していた(p<0.05)。HCV-HCCのうち、RDBP蛋白高発現群では、低分化癌が多く、門脈浸潤陽性症例が多かった(p<0.05)。また1年以内に残肝再発を認めた症例は有意にRDBP発現率が高く、RDBP発現率は多変量解析で独立した再発危険因子であった。 RDBPはHCV-HCCで発現が上昇し、脱分化、腫瘍の増殖、門脈浸潤と関与していることが示唆された。これらの結果からRDBPはHCV-HCCの分子標的となりうる可能性が示唆された。
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