【研究の目的】欧米では1型糖尿病に対し、膵島移植がβ cell replacement therapyとして臨床応用されているが、ドナー不足、移植5年後のインシュリン完全離脱率が低い、頻回の移植が必要などの問題点がある。その対策として倫理的ハードルが低く、DNA移入などの細胞制御を要さず、採取が容易で安全な脂肪由来幹細胞(Adipose tissue derived regenerative cell : ADRC)に着目し、そのADRCを用いて膵島細胞傷害に対するβ cell replacement therapyの効果について研究を行い、さらにその機序解明を目的とする。 【研究実施計画】 平成22年度 :薬剤誘導糖尿マウスにおけるADRC投与による膵島再生効果とそのメカニズムについて検討する。 平成23年度以降:薬剤誘導糖尿マウスの膵島、および血漿に対する網羅的解析とシグナル解析について検討する。 ADRCと傷害膵島、正常膵島の共培養下でのcell contactの有無による分化誘導の違いを検討する。【研究実績と展開】 【研究実績と展開】 1.STZ投与nude mouseにおけるADRC投与による機能的膵島再生の確認:ADRC投与後14日目のADRC群ではコントロール群に比して膵実質の著明な増量を認めた。糖負荷試験を施行するとADRC群は血糖値が110mg/dlまでに保たれ、良好な応答を示した。免疫組織染色では、ADRC群では2.6個/high power fieldのHLA陽性インシュリン産生膵島様細胞を認めた。ADRCは、分化方向を決定せずとも機能的膵島様細胞に分化し、耐糖能異常を改善したと考えられた。 2.誘導された膵島の解析:STZ投与nude mouseの膵島を分離・精製し、その膵島のin vitro functional assayであるstatic incubationを行い、長期にわたり糖反応性が維持されるかどうかの検討を行う予定である。 3.1型糖尿病マウスにおけるADRC投与による機能的膵島再生の効果:1型糖尿病のモデルマウスであるNODマウスを用いて、ADRCを経静脈的および局所注入(膵組織周囲)に投与し、空腹時血糖(Fasting Blood Glucose:FBG)および糖負荷反応性(IVGTT)を検討する。また移植後14日で犠死させ、膵組織の免疫組織染色を行い、組織学的にも膵島の比較検討を行う予定である。 4.Cell contactによる効果の検討:NODマウスの膵島およびSTZ誘導糖尿nude mouseの膵島を分離・精製しADRCと共培養し、分化誘導とそのメカニズムに関する比較検討を行う予定である。また、免疫学的隔絶膜を用いてそれぞれ2者のcell contactをなくした状態で共培養し同様に比較検討を行う予定である。
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