研究概要 |
肝細胞癌患者の血液より白血球分画を抽出し、Circulating tumor cell (CTC)としてCD45-CD90+cellの割合を調べると(35例)、0.01%~0.27%(中央値0.04%)と分布し、健常者(20例)0.01%~0.03%(中央値0.02%)より有意に高値であった。腫瘍径>3cmやStageの高い症例とCD45-CD90+cellの値は相関した。しかし、CTCの代表的なマーカーで肝細胞癌のstem cell markerとしても報告されるEpCAMを用いて、CD90+EpCAM+cellを調べると、健常者にも少数(0.01%)ではあるものの細胞が存在し、癌特異的とは言えないことが確認された。また抗体の反応条件によっても結果が異なること、血液中の癌細胞は非常に少数の細胞の検討であること、ヒトサンプルでは同一サンプルを繰り返し用いて方法の妥当性を検証することが難しいことから、まず癌細胞株を用いて、stem cell markerの特性を調べる事とした。肝細胞癌のstem cell markerとして知られるCD90, CD133, EpCAM, CD44の発現をqRT-PCRで8種類の細胞株を用いて調べ、さらにstem cellの代表的な抽出法として知られるHoechst染色を用いたSide population cellの分離を行い、SP cellを用いてこれらのマーカーの検証を行った。4株においてSP細胞が検出され、すべて高分化型の細胞であった。SP細胞・非SP細胞を、FACSを用いてsort分離し、前述stem cell markerの発現を比較すると、CD90, EpCAM, CD44においてSP細胞に発現が高いことが確認できた。抗体の非特異的な検出レベルもFACSでの発現解析とqRT-PCRでの発現解析結果と照らし合わせ今後の参考値とした。細胞の蛋白レベルで、MIB1を用いた細胞周期の比較をWestern法で行うと、SP細胞において、MIB1の発現低値すなわち、stem cellに特徴的なdormant stateであることが確認された。これら3つのマーカーを用いて、今後ヒト血液および組織からの細胞をFACS分離解析おこなっていく。
|