研究概要 |
肝細胞癌(HCC)における循環血中癌細胞(CTC)を検出するための有効なマーカーを探すことを目的として、CD44, CD90, EpCAMをマーカーとし、健常者17名、癌患者36名を対象に、FACSを用いて血中癌細胞の検出を試みた。結果、CD90+CD45-細胞に関して、癌患者の末梢血中に存在する単球細胞(PBMC)に占める割合は0.01~0.3%(Mean 0.05%)で、健常者と比較して癌患者の方が有意にその割合は高く、更にStageIII/IVにおいてその割合は高かった。EpCAM+CD45-, CD44+CD45-は健常者においても高値症例が存在し、癌患者と健常者の間に有意差は認めなかった。また、CD90+CD44+細胞が最も肝細胞癌の悪性度と関連するとの報告がなされているが(Sheung TF et al Ann Surg 2011)、これらの細胞の検出率は非常に低く(<0.01%)、現在の方法では検出感度や癌特異性に問題があると考えられた。 全ての患者に共通するマーカーを探すことよりも各々の癌幹細胞マーカーの発現パターンを調べる事が必要と考え、肝細胞癌細胞株7株を用い、蛋白レベルでの癌幹細胞マーカーの発現形式を調べると、mRNA発現レベルとは若干異なり、HepG2を除く、全ての細胞がCD90, CD133, CD44, EpCAM, CD13といった既知の癌幹細胞マーカーのいずれか2つを発現していた。また単一のマーカーのみではFACS解析にて発現細胞が100%を占めるものも存在し、単一マーカーでの癌幹細胞の検出には制限がある事が示唆された。新たにCD13(Haraguchi et al J Clin Invest 2010)やCD24(Lee et al Cell Stem Cell 2011)という報告も見られ、今後、これらを含めた検討も必要であると考えられる。
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