本研究は、新規癌抑制遺伝子CHFRの機能、制御機構がほとんど不明であるという現状に鑑み、[○!a]CHFR結合分子を探索、分子相互作用を手がかりとしてCHFRの機能と制御の分子機構を解明し、がんの新規分子標的治療の開発基盤を築くことを目的とする。さらに[○!b]Chfrノックアウトマウスを用いて個体レベルでの発がんへの寄与を明らかにし、[○!c]胃癌臨床検体を用いてCHFRと結合分子の発現量と実際の臨床所見との相関を解析することにより、予後診断への応用を目標とした研究である。 研究計画に則り、本年度は以下の4点について明らかにした。まず、(1)免疫沈降法/液体クロマトグラフ-質量分析を用い、CHFR新規結合分子としてPARP-1(Poly(ADP-ribose)polymerase-1)を同定した。さらに(2)両分子の結合をin vivoおよびin vitroで確認しまた、結合ドメインを明らかにした。CHFRがE3ユビキチンリガーゼ活性を持つことから、PARP-1がCHFRのユビキチン化/分解の標的であることが予測され、(3)in vitroおよびin vivoでCHFRがPARP-1をユビキチン化することを確認した。実際に、(4)Chfrノックアウトマウスから作製したマウス胎児繊維が細胞において、野生型と比較してPARP-1タンパク質が蓄積しており、CHFRがPARP-1タンパク質発現量を制御しているという新規知見が得られた。胃癌においてCHFRはDNA異常メチル化により高頻度にサイレンシングされていることを我々は報告しており、次年度は胃癌臨床検体におけるCHFRのメチル化ステータスとPARP-1発現量の解析、また、CHFR/PARP-1相互作用の生理学的意義について明らかにする予定である。
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