研究概要 |
【目的】腫瘍微小環境におけるTh1/Th2/Th17/Tregの免疫バランスと相互作用を明らかにすることで、腫瘍が構築する抗腫瘍免疫からのエスケープメカニズムを解明するとともに、将来に向けての胃癌に対する新規免疫療法を開発することを目的とした。【方法】胃癌82例を対象に腫瘍、正常組織よりTotal RNAを抽出した。Foxp3,CCL22,TGF-β,IL-6,IL-17,IL-21 mRNAの発現をLight Cyclerを用いてreal-time RT-PCR法により定量した。免疫組織化学染色により腫瘍組織における新生血管および好中球浸潤を定量的に評価した。【結果】Foxp3,CCL22,TGF-β,IL-6 mRNAはいずれも腫瘍組織において正常組織より有意に高発現しており(p<.0005)、Foxp3 mRNAの発現はCCL22,TGF-β mRNAの発現と強い相関を認めた(r=.750,p<.0001/r=.703,p<.0001)。またIL-17mRNA,IL-21 mRNAの発現も腫瘍組織において正常組織より有意に高発現であり(p<.0005)、それらの発現に相関を認めた(r=.758,p<.0001)。臨床病理学的因子との検討にて、腫瘍局所におけるIL-17 mRNAは腫瘍の深達度が増すにつれ高発現であり(p<.005)、またリンパ管浸潤陽性群,静脈浸潤陽性群においても高発現であった(p<.05)。腫瘍局所においてIL-17 mRNA高発現群では血管新生マーカーであるCD34陽性細胞の発現が有意に高く、また好中球浸潤数も有意に高かった(p<.05,p<.005)。腫瘍局所におけるFoxp3 mRNAとIL-17 mRNAの発現に相関を認めた(r=.557,p<.0001)。【考察】Treg細胞はCCL22により腫瘍局所にホーミングされ、腫瘍微小環境においてTreg細胞より分泌されるTGF-βが腫瘍局所で産生される、IL-6、IL-21とともにTh17細胞を分化・誘導することで腫瘍の増殖、進展に関与していると考えられた。【結語】腫瘍局所へのTregのホーミングの制御が免疫逃避解除の一助となることが示唆された。
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