研究課題
消化器癌において術後に縫合不全や感染などの合併症を起こした症例は長期予後が不良となることが知られている。炎症性サイトカインIL-8の受容体であるCXCR2は様々な癌細胞に発現しており、IL-8が結合することにより血管新生、腫瘍増殖、浸潤、遊走を促進するといわれている。食道癌におけるCXCR2発現と周術期合併症が予後に与える影響を検討し、その臨床腫瘍学的意義を明らかにすることを目的とした。1997年から2002年までにRO食道切除術を施行した83例の食道扁平上皮癌検体に抗CXCR2抗体を用いて免疫組織染色を行い、癌細胞の細胞膜における染色性を観察した。染色性の有無と無再発生存期間(DFS)、全生存期間(OS)などの臨床病理学的因子との相関を検討した。術後肺炎または縫合不全を周術期合併症とし、合併症とCXCR2発現が予後に与える影響を検討したところ、CXCR2は83例中33例(40.2%)に発現しおり、CXCR2陽性の症例は陰性例に比べDFSが予後不良の傾向であった(p=0.07)。特に周術期合併症例30例では、CXCR2陽性例8例は陰性例22例に比べDFSが著明に予後不良であった(p=0.013)。また、in vitroおよびin vivoにおいて、CXCR2を発現している食道扁平上皮癌細胞株にIL-8を曝露し、増殖能が促進されるかを検討したところ、in vitro、in vivoともに、CXCR2を発現している食道扁平上皮癌細胞株はIL-8曝露により増殖能が促進されたIL-8およびCXCR2のネットワークが食道扁平上皮癌の悪性度に関与している可能性が示唆された。CXCR2を発現している症例のうち、高IL-8血症をきたす周術期合併症例は厳重なfollowおよび積極的なadjuvant療法が必要であると考えられた。
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