平成23年度は、検討症例を腺癌43例、扁平上皮癌31例(平成14年度切除例)として、肺癌組織におけるCD44 standard form(CD44std)、CD44 variant 6(CD44v6)、およびgalectin-9の発現と、組織型、分化度、病期、予後について検討を行った。免疫組織化学法は、ホルマリン固定パラフィン包埋された肺癌組織を、3.5μmに薄切し、加熱による抗原賦活処理を加えた後、それぞれの抗原に対する一次抗体と反応させた。抗原抗体反応は、ストレプトアビジンビオチン法およびDAB発色により可視化した。 CD44stdおよびCD44v6の染色性は、細胞膜に陽性であり、galectin-9は細胞質に陽性であった。CD44stdは、扁平上皮癌の87.1%、腺癌の44.2%に陽性、CD44v6は扁平上皮癌の80.6%、腺癌の27.9%に陽陸、galectin-9は扁平上皮癌の58.1%、腺癌の95.3%に陽性であった。 分化度別には、腺癌において低分化になるほどCD44v6の陽性率が低下する傾向があり、扁平上皮癌において低分化になるほどgalectin-9の陽性率が低下する傾向が認められた。 病理病期別には、stage Iからstage IVへと進行するにつれて、CD44stdおよびCD44v6の陽性率は漸減した。一方、galectin-9は、stageの進行に伴って陽性率が増加した。 全生存率に対するCD44std、CD44v6、galectin-9の陽性所見が与える影響については、これまでの検討では有意な関係を示すことができなかった。
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