本研究は動物実験によって、人工血管感染の新しい予防法の開発を狙いとしている。具体的にはDNAワクチンの技術を血管外科領域に導入し、最も治療抵抗性であるMRSAを対象として、人工血管感染の予防法として確立することである。交付申請書に記載したとおり、22年度は(1)MRSAワクチンの合成方法の確立(2)MRSAワクチンの体内導入法の確立を目標とし、23年度は(3)MRSAワクチンを用いる人工血管感染の予防効果の評価(4)実施条件の最適化と感染予防のための新技術の開発、を目標としていた。(1)MRSAワクチンの合成に関しては、昨年度から引き続いて合成に力を入れているが、現在も難渋しておりHu DLらの方法(Infect Immun.2005:73:174-80)を用いているが、安定した合成に至っていない。(2)MRSAワクチンの体内導入法の確立に関しては、昨年度の報告書に記載した通り、MRSA縦隔炎モデルの方が研究内容に合致すると考え変更した。現在、ラットMRSA縦隔炎モデル(Journal of Chemotherapy. 2006 ; 18 : 268-77)が手技的に確立され、(1)のDNAワクチン合成が達成され次第導入を行う準備ができた。(3)MRSAワクチンを用いる人工血管感染の予防効果の評価としてバイオフィルム形成人工血管の作製中である。MRSAの菌液を1.0×10^8colony-formingunits(CFU)/mlに調整する手技は確立しているので、計画書通りバイオフィルム形成(細菌含有層性)人工血管を作製している。(4)実施条件の最適化と感染予防のための新技術の開発に関しては、感染性人工血管移植モデルに作成において当科の岩田・村瀬の協力を得て速やかに達成できる見込みである。DNAワクチンの安定供給を実現する必要があり、これを急いでいる。
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