研究課題/領域番号 |
22791310
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田澤 大 岡山大学, 大学病院, 助教 (90415513)
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キーワード | マイクロRNA |
研究概要 |
腫瘍選択的に増殖する遺伝子改変アデノウイルス製剤を用いたがんウイルス療法は、癌細胞にオートファジーを主体とする細胞死を誘導して強力な抗腫瘍活性を示す。しかし、腫瘍融解アデノウイルスによるオートファジー細胞死の誘導分子機構は未だ不明である。本研究では、我々が独自に開発したテロメラーゼ活性依存的に腫瘍特異的な細胞死を誘導するアデノウイルス製剤OBP-301を用いて、がんウイルス療法によるオートファジー細胞死の誘導機構におけるマイクロRNAを主体とする遺伝子制御ネットワークの存在を明らかにする事を目的とした。本年度は、まずOBP-301に抵抗性を示すヒト食道癌細胞株T.Tnやヒト正常線維芽細胞株NHLFを用いて、OBP-301感染後にオートファジー関連因子やマイクロRNA-7の発現が変化しない事を確認した。前年度に明らかにしたOBP-301感受性のヒト非小細胞肺癌細胞株H1299、A549の解析結果も含め、OBP-301の細胞障害活性とオートファジー関連因子(LC3-II/LC3-I比、Atg5、p62)やマイグロRNA-7の発現変化に有意な相関関係を認めた。さらに、OBP-301感染後のH1299、A549細胞はE2F1の発現増強やEGFRの発現低下を認めたが、抵抗性のT.Tn、NHLF細胞では変化しなかった。E2F1の強制発現系や発現抑制系の実験結果から、OBP-301によるマイクロRNA-7の発現増強にE2F1が関与する事を確認した。マイクロRNA-7の強制発現はターゲット遺伝子であるEGFRの発現を抑制した。ヌードマウスのH1299皮下腫瘍モデルにおいて、OBP-301の腫瘍内投与が腫瘍組織内にマイクロRNA-7を誘導する事を確認した。今後はウイルスによるマイクロRNA-7を介したオートファジー細胞死の誘導分子機構についてさらに解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍融解アデノウイルス製剤OBP-301によるオートファジー細胞死の誘導機構に関与するマイクロRNA-7を同定した。OBP-301が転写因子E2F1の発現増強を介してマイクロRNA-7を誘導する機構を解明し、マイクロRNA-7がターゲット遺伝子EGFRの発現抑制を介してオートファジーを誘導する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
OBP-301の基本骨格である正常5型アデノウイルスを用いて、アデノウイルスがオートファジー細胞死を誘導する分子機構に共通してマイクロRNA-7の遺伝子制御ネットワークが関与する事を明らかにする。さらに、マイクロRNA-7によるオートファジー細胞死の誘導機構における分子メカニズムのさらなる解明を行う。
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