研究概要 |
これまでの実験より肺移植後の虚血に対する肺障害にEgr-1転写因子が強く関与し、これをノックアウトすることにより重度の肺障害を免れることを証明した。他の研究グループより気管移植後の拒絶反応を緩和する可能性を示唆する報告があり我々は本研究に置いて急性期の肺移植モデルにおいて拒絶反応でのEgr-1の関与の解明を試みた。マウスの同所性異型肺移植では1週間以内に移植された肺が強く拒絶されることを確認した。ドナー側のEgr-1をノックアウトすることにより急性期の拒絶反応が明らかに抑制される所見を認めた。拒絶された移植肺内のサイトカインはそのmRNAレベルをPCRを用いてみてみると、IL-1b、MCP1, PAI-1、がいずれも高発現していたがEgr-1KOドナーでは拒絶のないコントロールグループと同程度であった。免疫染色により検出したEgr-1タンパクの発現も同様であった。移植肺より分離したT細胞をフローサイトによりその表面マーカー(CD4/CD8)をみてみると、拒絶肺で有意にCD4+細胞が多く見られたがコントロールである同系移植肺とEgr-1KOドナーの肺では同程度であった。 これらの結果より早期移植反応にEgr1の働きが非常に有用であることが示唆された。しかしながらアロ抗原に対する反応に直接かかわる機能があると考えにくく、実際に免疫抑制剤を使用しないとEgr-1ノックアウトドナーでは数日を経て次第に拒絶反応が見られた。しかしながらこれらの結果は急性期の拒絶反応は炎症反応をつかさどる転写因子、Egr-1が強く関与し、さらに前実験より虚血再還流障害への関与から移植後の機能不全とその後の拒絶反応の関連性が示唆される。
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