研究概要 |
近年発見契機が増加した小型末梢肺癌に対しては,標準術式とされてきた葉切除に代わり切除範囲を縮小する区域切除の適応が検証されている.しかし区域切除適応の鍵を握るリンパ節転移診断法は確立されていない.正確なリンパ節診断を行うために,我々の施設では経気管支水溶性造影剤注入によるCTリンパ管造影(CTLG)を開発し,術前にセンチネルリンパ節(SN)同定を行っている.同法の安全性及び有用性について検討を行った. CTLGの手技は以下の通り施行した.(1)CT画像からBF-Navi(オリンパス社)を用いて目的気管支までのナビゲーション画像を作成.(2)IVR-CT室にてナビゲーション画像を参考にしながら細径気管支鏡で目的気管支に到達.(3)水溶性造影剤を目的気管支に注入しCTを撮影.初期4症例の検討から,造影剤の注入量は2-3mlとし,CT撮影のタイミングは造影剤注入後30秒後(及び5分後)に設定した.センチネルリンパ節(SN)の同定は,全ての肺門,縦隔リンパ節についてCTLG前後のCT画像,及び通常の造影CTを比較し行った.CTLG前後でCT値が30HU以上上昇したリンパ節をSNと定義した.SNは3D-CTを用いて周囲の血管,気管支との解剖学的位置関係を十分に把握し,手術の際には通常の縦隔リンパ節郭清を行うとともに,SNは別に保存し病理学的評価を行った. 臨床病期I期肺癌(疑いを含む)症例22例に対しCTLGを施行した.CTLGに起因する有害事象は認めなかった.肺癌症例20例における患者背景は,平均年齢65歳,男/女:8/12,cT1a/cT1b/cT2a:12/6/2,右上葉/右中葉/右下葉/左上葉/左下葉:8/1/6/2/3,腺癌/扁平上皮癌:16/4であった.20例全例で目的気管支への到達が可能であった.SNの同定は19例で可能であり(同定率95%),SN stationの個数は平均1.5個であった.術後リンパ節転移が判明した症例が2例あり,これらのリンパ節はいずれもSNに含まれていた. CTLGは臨床病期I期肺癌症例における術前のSN同定法として,安全に行うことができる有用な検査法であることが示唆された.
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