COPDは組織学的には肺胞・気道の不可逆的破壊であるため、肺組織の再生が理論的に有望な治療法であると考えられる。COPDに対する再生医療は動物実験では既に成功しており、ゼラチンハイドロゲルを用いて徐放化したbasic-fibroblast growth factor(basic-FGF)製剤の肺胞内へ直接注入で、気腫化した肺胞の回復が確認されている。しかし、高度の呼吸困難を有する患者の気道内への注人は高いリスクを伴うため臨床応用の可能性は低いと考えられる。COPD患者では高頻度に気胸が発生する。我々は、気胸を発生したCOPD患者の治療中に、徐放化basic-FGF製剤をドレーンより胸腔内投与すれば、COPDに対する再生医療の臨床応用が容易に実現可能になると考え、動物実験により検証した。14週齢のSprague-Dawley ratを用い、porcine pancreatic elastase 500 IU/250μLを気道内へ注入し8週間観察し肺気腫ラットを作成した。この肺気腫ラットの左胸腔内へ徐放化basic-FGF製剤添加フィブリン糊を注入し、14日目にsacrificeして肺を摘出、対側の肺を対照として組織学的に評価した。結果、一視野あたりの肺胞数は処置側が267、対側が105、肺胞の面積は処置側が0.0043±0.0016mm^2、対側が0.0169±0.0091mm^2であり、徐放化basic-FGF製剤の胸腔内投与による肺胞隔壁の修復が確認された.
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