研究概要 |
平成22年度は肺気腫モデルの確立を目指し、VEGFのノックダウンをc57/BL6マウスに対して、VEGF遺伝子に対するsiRNAをInfasurfと混合したのちマウス鼻腔より投与した。H.E.標本を作製し、組織学的変化の詳細を画像解析ソフトを用いたmorphometryを行ってその経時的変化を検討した。また、siRNAの作用期間と考えられる48-72時間と形態学的変化が合致するか否かを検討し、またlnfasurf単独投与群をコントロールとして、その比較によって肺特異的遺伝子翻訳阻害モデルとしての妥当性を評価した。その結果、肺気腫に類似する形態学的変化、つまり肺胞壁の破壊と気腔拡大が起こっていることが明らかとなった。一方で、組織学的には炎症は起こっておらず、その原因が炎症によるものではないと考えられた。さらに、肺気腫に類似する形態学的変化が一過性のものであり、その経時的変化がsiRNAの作用期間とほぼ一致していること、Infasurf単独ではこれらの形態学的変化が起こりえないことが明らかとなった。 平成23年度は各因子のmRNA量およびタンパク発現量と形態像との経時的変化を解析した。Westernblotting法を用いた解析によって、VEGFタンパク発現と形態学的変化の時間的な相関が明らかとなった。DCI(dexamethason,c-AMP,isobutylmehylxanthine)またはレチノイン酸投与を同時に行うことによって形態学的変化を抑制できるかの救済実験を試みた。上記と同様のmorphometryによってDCI投与群ではVEGFsiRNA投与群で起こる形態学的変化が起こらないことが分かった。これらの知見は肺気腫の病態におけるVEGFの役割や肺気腫治療開発の第一歩となる研究と成り得ると考えている。
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