【in vivoでの遺伝子発現の比較検討】2001~2008年に、当施設において切除された種々の組織亜型を含む肺癌組織115症例(ホルマリン固定115組織)を対象とした。肺癌組織にアクアポリン1の免疫組織染色を行い、また癌関連マーカーとの関連性を調べるために、CEA・p53・Ki67の免疫組織染色を行った。アクアポリン1の過剰発現は、腫瘍細胞の10%以上認める場合、過剰発現と判断した。cEAは腫瘍細胞の60%以上を陽性、p53は腫瘍細胞の30%以上を陽性、Ki67は腫瘍細胞の10%以上を陽性と判断した。術後再発において、病期とアクアポリン1の過剰発現とKi67と腫瘍径は、単変量解析で有意差を認めたが、多変量解析では有意差を認めなった。また、アクアポリン1の過剰発現と癌関連マーカー(CEA・p53・Ki67)は統計学的に有意差を認めず、関連性が低いことが示唆された。アクアポリン1の過剰発現は、腫瘍の進展と関係がある癌細胞において、アクアポリン1の遺伝子調節の変化から生じる可能性があると考えられた。 【in vivoでの発現と機能変化の検証】A549肺腺癌培養細胞は、Western blot法でアクアポリン1のタンパク発現が認められた。EBC-1肺扁平上皮癌培養細胞で、まだWestern blot法でアクアポリン1のタンパク発現を確認していない。今後は、アクアポリン1の高発現・高侵襲性細胞株とアクアポリン1低発現・低侵襲性細胞株を選別し、関係遺伝子の遺伝子導入、siRNAによるノックダウン、各MAPキナーゼ特異的阻害薬を加え、アクアポリン発現の変化と細胞移動・浸潤能をscratch法とmatdgel invasion assayで解析する予定である。
|