水分子の特異的チャネルとして発見されたアクアポリンaquaporin(AQP)に、がんの生物学的特徴に関わる予期せぬ機能があることが最近報告され、肺癌浸潤部におけるAQP1の発現亢進と術後転移の関係を明らかにした。今回、AQP1の発現メカニズムに関して研究を行った。今回、我々の研究のではAQP1の過剰発現とHIF-1αに相関は認められなかった。しかし、エピジェネティクス機構であるヒストン修飾に注目し、肺癌術後再発との関連の研究を行った。ヒストン修飾の一つであるDimethylated histone3 lysine4(H3K4dime)は肺癌の術後再発と病期と細胞分化で関連を認めた。H3K4dimeとDimethylated histone4 arginine3(H4R3dime)とAcethylated histone3 lysine9(H3K9Ac)は肺腺癌における細胞分化と関連があった。Western blot法での蛋白発現でも、術後再発症例にH3K4dimeが発現していることが確認できた。また、H3K4dimeはHIF-1αとも関連していた。 今回の研究では、AQP1の発現メカニズムに関してはっきりとした成果は出せなかったものの、肺癌の術後転移にはヒストン修飾が強く関与していることを解明した。そして、術後転移に関わるAQP1とヒストン修飾に相関関係があるのではないかと強く示唆できるもであった。 今後は、浸潤性局所制御のための標的分子をAQP1とヒストン修飾に置き、浸潤部局所in vivo/in situ及び培養肺癌細胞を用いたin vitro実験で検証することを目的として行っていく予定である。本研究は、さらなる肺癌克服に向けた新規治療法確立のための研究に連なるものと確信し、今後の肺癌の転移機構に関しての解明、及び、肺癌浸潤部の分子生物学的機構の解明に繋がる研究であったと考える。
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