本研究は以下の2点を目的としている。 <1>現行システムによる循環腫瘍細胞(CTC)/内皮細胞(CEC)の臨床的意義の検討 大腸癌肺転移症例における、末梢血液中循環腫瘍細胞(CTC)や内皮細胞(CEC)のバイオマーカーとしての意義を検討し、CTC/CECの肺転移巣切除の適応や手術時期の決定における臨床的有用性を明らかにすることが目的で以下の項目を検討することで明らかにする。同時に新規CTC検出システム開発(遺伝子発現を指標とした間接的証明法)にも取り組み、臨床的有用性の向上を試みる。 1)腫瘍進行度の臨床的指標(肺転移個数や他臓器転移、腫瘍マーカー等)との相関 2)肺転移手術までの化学療法の効果との相関 3)肺転移手術後の予後(無再発生存期間や全生存期間)との相関 4)CTCの分子生物学的特性(K-RAS変異等)の解析の可否 当科(兵庫医科大学呼吸器外科)を受診した大腸癌肺転移症例を対象に、末梢血液中のCTC/CECを自動分離システム(Cell Search[○!R])で定量した。これまでの解析対象60例のうち8例(13.3%)においてCTCが検出され、その個数は末梢血液7.5mLあたり1個が5例で、2個が2例、6個が1例であった。また臨床経過(再発の有無、再発形式や予後)との関連については現在解析中である。現在までの成果は以下の通り。 ●手術症例の多くはCTCが0-1個であることが明らかになった。このことよりCTCが0-1個であるということが手術を行う基準となりうる可能性が示唆されている。 ●CTCと予後の関連性については今後さらに解析を加え、その意義を検討する予定である。 ●分離されたCTCからの遺伝子抽出については、得られた遺伝子がごく少量であったため解析不能であった。 <2>新規の循環腫瘍細胞(CTC)検出システムの開発 また新規CTC検出システム(遺伝子発現を指標としたCTCの間接検出法)を探索し、現行システムとの比較検討により臨床的有用性の優劣を明らかにすることを目的としている。末梢血液8mLを採取し、単核球分画を分離後にRNAを抽出し、上皮性マーカーの発現をRT-PCRにより確認した。 現在3例において検体を採取し解析中である。
|