胸部大動脈瘤ステントグラフト内挿術のトレーニングのためのシミュレータを開発するため、本年度は、弓部分枝を含む胸部大動脈瘤モデルの開発・拍動流の最適化・三次元造形による胸部大動脈瘤モデルの構築の3点に重点を置いて研究を行った。まず、弓部分枝を含む胸部大動脈瘤モデルの開発においては、今後、ステントグラフト内挿術の適応となることが予想される弓部遠位部大動脈瘤をモデル化するために、弓部3分枝(右腕頭・左総頸・左鎖骨下動脈)を持つ循環回路を設計し、回路の作製に成功した。また、拍動流の最適化においては、生体により近い拍動流を再現できるように、循環回路に改良を加えた。ローラーポンプを用いた拍動流回路では、流量を増やすためには、ポンプの回転数を上げなければならないため、心拍数に相当する拍動回数が流量の増加に応じて上昇するという問題があった。この点を克服するため、ローラーポンプ部分の回路の大口径化を図り、心拍数と同等の拍動回数で生体と同等の流量(心拍出量)を確保することが可能となった。最後に、三次元造形による胸部大動脈瘤モデルの構築においては、次年度に向けて、三次元CT・血管造影の画像をもとにコンピュータ上で個々の症例に応じた三次元大動脈瘤モデルをデザインし、個別の大動脈瘤モデルを作製できるように、三次元造形装置・ワークステーションのセットアップを行った。実際の症例のCT画像をもとに、三次元の大動脈瘤モデルをコンピュータ上で作製し、三次元造形装置に出力できるように編集を行った。
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