胸部大動脈瘤ステントグラフト内挿術のトレーニングのためのシミュレータを開発するため、平成23年度は三次元造形による弓部分枝を含む胸部大動脈瘤モデルの開発に重点を置いて研究を行った。実際の症例より得た三次元CT画像をもとに、Osirixを用いてSTL(Standard Triangulated Language)フォーマットの弓部大動脈瘤モデルをコンピュータ上に作製した。これをCADソフトウェア上で三次元造形装置に出力できるように加工し、前年度にセットアップを行った三次元造形装置にて、発砲スチロールを削り出すことにより弓部大動脈瘤の発泡スチロールモデルを作製した。この発泡スチロールモデルを特殊シリコンにて3層コーティングした後、発泡スチロール部分を除去することによりシリコン製の弓部大動脈瘤モデルを作製した。また、前年度に開発した弓部3分枝を持つ循環模擬回路においては、シリコン製の弓部大動脈瘤モデルと接続できるよう改良を加え、さらにより生体に近い拍動流を生成できるように回路内に新たに一方弁を追加した。最終的には、本回路をシリコン製の弓部大動脈瘤モデルと接続し、実験を行った。生理食塩水にて回路内を充填し、体外循環用のローラーポンプにて拍動流を生成し、回路内の流量や圧を記録した。その結果、本シミュレータでは、体外循環用のローラーポンプを用いて生体に近い拍動流を弓部大動脈瘤モデル内に生成することが可能であったことから、本シミュレータは、個々の症例のCT画像をもとに作製した大動脈瘤モデルを用いた症例ごとの個別術前トレーニングにも応用できると考えられた。
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