研究概要 |
本研究では、国内で最も使用されている空気駆動式補助人工心臓システムがポンプ駆動状態や血流量の十分なモニタリング機能を有していない問題点を解決するべく、既存のシステムに手を加えることなくドライブライン(駆動用エアホース)に挿入するだけでポンプ血流量や駆動状態の異常の検知を行う小型モニタリングシステムの開発を目的とした。昨年度までに空気駆動式血液ポンプと駆動装置(VCT,Mobart,開発中の小型空気駆動装置)を用いた駆動試験を行い、静的な前後負荷条件にて半導体式空気質量流量センサで計測したドライブライン空気流量とポンプ拍出流量との間に高い相関性を確認した。本年度はまず、生体側の拍動やコンプライアンスが空気流量とポンプ拍出流量の相関性に及ぼす影響について検討するため左心系を模した拍動を有する模擬循環回路に接続したポンプの駆動試験を行った。具体的には、バイパス流量3~5L/min、平均の後負荷を80、100、120mmHg程度に変化させた条件でドライブラインの空気流量とバイパス流量を計測した。つぎに、2例の慢性動物実験(仔牛91,98Kg、左室心尖脱血-下行大動脈送血)にて、2~4L/minの範囲でバイパス流量を変化させたとき同様に空気流量とポンプ血流量を計測した。さらに、これらと駆動圧の情報をもとにポンプの流量異常を検知するアルゴリズムを構築した。その結果、模擬循環回路と慢性動物実験の環境下ともに平均の駆出方向の空気流量とポンプ拍出量は正の相関を示した(R2=0.84-0.96)。これにより策定した推定式からポンプの分時流量推定を行った結果、慢性実験2例の条件下にて、誤差率0.25%-14.1%であった(駆動装置:VCT-50)。また、模擬循環試験において、構築したアルゴリズムを用いてドライブラインや送脱血管に起因する異常を検知可能であった。
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