当教室に保存してある膠芽腫をはじめとする神経膠腫の検体よりDNAを抽出し、Methylation specific PCRによりDNAのメチル化を解析した。臨床データとの統合統計解析を行った結果、MGMTのメチル化がアルキル化剤により化学療法を行った膠芽腫の予後予測因子であることが示された。この結果は実臨床に応用することができて、新規および再発膠芽腫の治療において、化学療法適応の決定や薬剤選択、治療継続の適否を検討する際に大いに参考にすることができるようになった。一方、WHO grade2および3の神経膠腫に対しても同様の解析を行った結果、低悪性度神経膠腫ではMGMTメチル化と予後に有意な相関は得られなかった。 2010年に発表された論文において、IDH(lsocitrate dehydrogenase)の変異がゲノムワイドなメチル化フェノタイプと強い相関をもつことが示されたため、当教室の手術検体についてもIDHの変異をダイレクトシークエンス法にて解析し、メチル化の状態と比較することとした。その結果、低悪性度神経膠腫において、このIDHの変異とMGMTのメチル化が強い相関を示すことがわかった。 さらに、ゲノムワイドなメチル化解析を行うため、Illumina社のInfinium450KのChipを用いて450000個以上のCpGサイトのメチル化状態を半定量的に解析した。まずは30検体程度の解析で階層型クラスタリングを行ったところ、IDHの変異と関連したゲノムワイドなメチル化フェノタイプを自験例にて示すことができた。このメチル化の変化を詳細に解析することにより、膠芽腫や低悪性度神経膠腫の発生や悪性転化の機序の解明、さらにはメチル化やIDH変異に応じた新規治療法の開発につながることが期待される。
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