平成22年度はマウスにおける頭蓋内内頚動脈拡張後再狭窄モデルの確立と病態生理解明を目的に研究を進めた。 C57BL6/Jマウスを用いた検討では、傷害1日後ではHE染色にて血管の傷害、拡張が認められ、また、血管平滑筋細胞のアポトーシスも認められたが、当初の予想に反して、慢性期になる2ヵ月後では脳動脈のリモデリングがごく軽度かほとんど観察されず、傷害血管における病態生理解析の評価は困難であった。そこで、マウスの系統差による血管反応性の違いを考慮し、過去に頭蓋外の血管において血管傷害に対する強い反応性が報告されているFVBマウスに変更し、さらに塞栓糸へのコーティング剤の塗布範囲を広くし、塞栓糸の留置時間、血管内留置後に、血管内皮細胞に傷害を与えるために血管内で塞栓糸を往復させる回数を増やしたところ、傷害後1ヵ月目では、傷害血管の中膜、外膜への単核球浸潤と肥厚を認め、2ヵ月目で傷害血管の新生内膜形成と肥厚、血管外膜への単核球浸潤が認められた。 この時点での問題点として、マウス間での血管リモデリングの程度のばらつきが大きく、平成23年度に予定している遺伝子改変マウスを用いた病態解析および治療実験のためにはこのモデルをさらに安定化させる必要があったが、FVBマウス単独での経時的な病態解析(免疫染色による内皮細胞、平滑筋細胞、炎症関連細胞の発現など)は可能であると考えられたため、H23年度はこのモデルマウスを用いて病態解析を行うとともに、モデルの安定化を図った。
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