平成23年度は平成22年度に確立した頭蓋内動脈傷害モデルを用いて病態の解明とrapamycinに対する反応の検討を行い、また、Lp(a)Tgマウスを用いたLp(a)の脳血管傷害に対する反応性を検討した。 まず、頭蓋外血管では新生内膜肥厚が7日目、再内皮化が3日目、血管壁への炎症細胞浸潤が1日目から起きるのに対し、頭蓋内動脈では新生内膜肥厚が14日目に、再内皮化の開始は7日目より開始され、炎症細胞(F4/80陽性マクロファージ)の浸潤は外膜のみに7日目から56日目まで蓄積していた。中膜に存在する血管平滑筋もアポトーシスにより3日目には消失し、以降、再出現しなかった。以上の結果から、脳動脈傷害に対する血管の反応は、頭蓋外とは大きく異なる可能性が示唆された。 頭蓋内動脈硬化病変に対するDrug eluting stent(DES)の効果、特に再狭窄の抑制効果については一定の見解が得られていない。そこでrapamycinがどのような影響を与えるか検討したところ、新生内膜肥厚、炎症細胞の浸潤が強く抑制されることが明らかとなった。DESで問題になる再内皮化の抑制についても傷害後56日目の時点では特に抑制されていなかった。これらのことから、rapamycinは新生内膜肥厚の抑制に有効であることが示されると同時に、このモデルが治療実験に使用できることも確認できた。 これらの結果をもとに、近年、脳卒中の独立した危険因子とされているLp(a)が脳血管傷害後にどのような影響を与えるか、雄Lp(a)Tgマウスを用いて検討した。結果として、新生内膜肥厚、炎症細胞の浸潤、再内皮化には大きな影響は与えなかったことより、脂質異常症の一つである高Lp(a)血症については、頭蓋内動脈傷害後のリモデリングに影響を与えない可能性が示唆された。 以上から、頭蓋内動脈障害後の血管リモデリングの病態解明および治療実験に応用可能なマウスモデルが確立されたと同時にrapamycinは頭蓋内動脈における新生内膜肥厚を抑制でき、また、Lp(a)は影響を与えないことが明らかにすることができた点が、今後の頭蓋内動脈硬化病変の治療法開発にとって意義があると考えられる。
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