研究概要 |
1、嗅神経鞘細胞と嗅粘膜由来神経前駆細胞(NPC)の単離と特性評価 雌性8週齢ラットより嗅粘膜を採取し、酵素処理にて細胞を単離した。この細胞群を免疫染色し、構成細胞の種類を同定した。嗅神経鞘細胞(OEC)と神経細胞が主要な構成細胞であることを確認した。この分画を培養したのち、OECを,p75を付加した磁気ビーズを用いた方法を用いて単離した。 一方、大脳由来神経幹細胞培養法と同様にニューロスフェア法を用いることにより、成体ラット由来嗅粘膜由来NPCを作成した。この細胞群は、分化誘導培地で培養すると神経細胞アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化し,多分化能を有することが確認された。 2、大脳皮質-マトリゲル(移植細胞)2種組織共培養系による、神経軸索伸長作用の評価 In vitroの神経軸索伸長評価系として、大脳皮質-マトリゲル3次元共培養系を用いた神経軸索伸長評価系を確立した。細胞を混合しマトリゲルに生後3日齢ラット大脳皮質スライスを共培養し、ゲル内に伸長する軸索をニューロフィラメント抗体で染色し、伸長した軸索の本数と距離を測定するものである。まずコントロールとして、軸索促進効果の報告のあるシュワン細胞と軸索伸長阻害効果の報告を持つ線維芽細胞をゲル内に混合し、それぞれ軸索伸長促進および阻害効果を持つことを確認した。この評価系に、嗅粘膜由来NPCおよびOECを含有している初代嗅粘膜由来細胞を移植したところ、初代嗅粘膜由来細胞群において、有意に軸索伸長を認めた。大脳皮質由来神経軸索はOECの細胞表面を伸長することが観察された。また、初代嗅粘膜由来細胞群に成熟神経細胞が生存されることも確認された。大脳皮質由来神経軸索と、初代嗅粘膜由来細胞群由来神経細胞との間に神経ネットワークを形成する可能性が示唆された。 今後、ラット脊髄損傷モデルにおいて、上記と同様の効果を有するか検証を進める予定である。
|