悪性神経膠腫手術例から得た臨床検体計21例を対象とした。腫瘍幹細胞の分離・同定は、neurosphere法に加え、当院の癌幹細胞制御学講座とともに確立したFACSを用いた方法にて腫瘍幹細胞を濃縮する方法を用いた。得られたCD133陽性分画の細胞表面に存在する分子をsignal sequence trap法や採取したmRNAを使用しmicroarray法にてCD133陰性分画との遺伝子発現比較により候補遺伝子を選択し、CD133陽性分画に発現する分子の同定を試みた。さらに、フローサイトメトリーを用いて膠芽腫検体で候補分子の発現とCD133の発現との関係を蛋白レベルで検討し、CD133+細胞に高発現する分子を同定を試みた。その結果CD166/ALCAM(Activated Leukocyte Cell Adhesion Molecule)が上記の条件を満たす分子であることを見出した。 さらに我々はCD166/ALCAMの悪性神経膠腫における機能的役割を検討した。具体的にはsiRNA、shRNAによるノックダウンを行い、その後機能の解析方法としては1)Transwellを用いたmigration、2)細胞増殖能の評価、3)Zymographyを用いたMMP-2/9活性の測定、4)免疫不全マウス胎児脳への移植による造腫瘍活性、増殖、浸潤能の評価を行った。その結果CDI66/ALCAMは細胞増殖には関係はないが、浸潤の抑制に関連している分子であることを見出した。さらにCD166/ALCAMはsoluble isoformがあることが知られており、soluble CD166/ALCAMの機能的役割についても同様の検討を行ったところ、soluble isoform CD166/ALCAMは浸潤を促進する分子であることを見出し、さらにこのsoluble CD166/ALCAMを発現させたU87MGグリオーマ細胞株は免疫不全マウスへの投与では明らかに腫瘍形成が促進されていることを見出した。 これらの結果より悪性神経膠腫の治療ターゲットとなりうる分子としてsoluble isoform CD166/ALCAMが考えられる。現在この標的遺伝子を導入した間葉性幹細胞療法の可能性について検討中である。
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