平成22年度は、げっ歯類を用いて重症頭部外傷モデルを作成し、モデル作成後急性期に幹細胞を動注により移植する実験系を確立した。Fluid percussion装置(DragonFly社製)を用いて、一側性の重症頭部外傷モデルを作成した。げっ歯類に対しては、2.5atm程度の力で外傷を加えることにより、安定した重症頭部外傷モデルを作成することができた。モデル作成後3時間の時点で、顕微鏡下に、カテーテルを内頚動脈に留置して、ゆっくりと1000000個/100ulのげっ歯類由来の骨髄幹細胞を移植した。移植24時間後にサクリファイスを行い、移植された幹細胞の生着を評価した。なお、移植に用いた幹細胞は、蛍光標識物質であるQ-Dot等を用いて標識し、移植後の生存細胞数のカウントや、幹細胞の分化・遊走を後で評価できるようにしておいた。一般的に、脳虚血モデルの場合、移植された幹細胞が、虚血巣に向かって遊走し、ペナンブラの領域に生着するとされており、我々も同様の所見をすでに確認しているが、頭部外傷でも同様の所見が確認できた。すなわち、外傷側のcortexにおいては、移植された細胞が多く存在しており、一方で健側のcortexにおいては、移植された細胞を確認することができず、頚動脈的に移植された細胞が損傷部位に向けて遊走していることが確認できた。なお、移植された細胞は、一部、損傷側の海馬や線条体にも存在していた。
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