研究概要 |
正常ラット、高脂血症ラット(in vivo系)、コレステロール除去剤(B-サイクロデキストリン;B-CD)を添加した餌で飼育した高脂血症ラット(コレステロール除去ラット)の内頚動脈平滑筋細胞内のラフト構成成分を測定し、血清コレステロール値の上昇やコレステロールの除去が血管平滑筋細胞膜におけるラフト構成成分に及ぼす影響を検討した。 〈血管平滑筋細胞のラフト構成成分の解析> 1.SDラット(正常群、高脂血症群、コレステロール除去群)を用い、全身麻酔・人工呼吸管理下に内頚動脈を採取した。 2.採取した内頚動脈の外膜を丁寧に剥離・除去した。検体を均質化し、有機溶媒抽出後にガスクロマトグラフ法を用いて総コレステロール濃度(mg/g)を測定した。また、同じ検体に対して薄層クロマトグラフ法を用いてphosphatidylcholine濃度(mg/g)を測定した。コレステロールはラフトに多く含まれている。phosphatidylcholineは細胞膜リン脂質の主成分であり、ラフト構成成分に対するコントロールとして評価する。 3.ガスクロマトグラフ法を用いた検討では、高脂血症群では内頚動脈平滑筋細胞内の総コレステロール濃度は正常群と比較して有意な上昇が認められた(0.49±0.09mg/g,vs.0.82±0.24mg/g*)。一方、コレステロール除去群では高脂血症が引き起こす総コレステロール濃度の上昇は有意に抑制された(0.47±0.06mg/g,vs.0.82±0.24mg/g*)。薄層クロマトグラフ法を用いてphosphatidylcholine濃度(mg/g)を測定したところ、3群間に有意差は認められなかった。(mean±sd,*p<0.05) 昨年度までの研究の結果、高脂血症ラットではsphingosylphosphorylcholine(SPC}が引き起こすRho-kinaseを介する脳血管攣縮が増強された。一方、B-CDによるコレステロール除去ラットでは高脂血症が引き起こす脳血管攣縮は改善された。今年度の研究結果からは、脳血管攣縮は血管平滑筋細胞内のラフトの構成成分である総コレステロール濃度により制御される可能性が示唆された。
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