研究概要 |
透過型電子顕微鏡を用いて脳血管平滑筋培養細胞を観察し、コレステロール除去剤(B-CD)刺激が血管平滑筋細胞膜におけるラフト構成成分に及ぼす影響を検討した。 <透過型電子顕微鏡を用いたラフトの観察> 1) 脳血管平滑筋培養細胞を用い、ラフトマーカー(GM1)をcholera toxin B subunit のbiotinのコンジュゲートで標識し、gold particles(6 nm)のstreptavidinのコンジュゲートで検出した。2) 上記1) で作成した切片を透過型電子顕微鏡を用いて観察し、血管平滑筋細胞におけるラフトの分布を検討した。3) 脳血管平滑筋培養細胞に対してB-CD(5 mM)刺激(2時間, 37℃)を加え、上記1) 2) と同様の操作を行いB-CD刺激によるラフトの細胞内分布の変化を検討した。4) 透過型顕微鏡を用いた検討ではB-CD刺激により血管平滑筋細胞膜に分布するGM1の減少が確認され(1.80 vs. 0.76 GM1/μm*)、コレステロール除去により細胞膜のラフトが減少する可能性が示唆された。(mean±sd, * p<0.05) 昨年度までの研究の結果、高脂血症ラットでは血管平滑筋細胞内のラフトの構成成分である総コレステロール濃度が上昇し、sphingosylphosphorylcholine(SPC)-Rho-kinase系による脳血管攣縮が増強された。一方、B-CD投与によるコレステロール除去ラットでは血管平滑筋細胞内の総コレステロール濃度の上昇が抑制され、高脂血症が引き起こす脳血管攣縮は改善された。今年度の研究結果からは血管平滑筋のコレステロールの除去が細胞膜のラフトの減少を引き起こすことが確認できた。これらの結果を総合すると、血管平滑筋のコレステロールの上昇が引き起こすラフトの形成が脳血管の攣縮機構を制御する可能性が示唆された。
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