平成22年度は以下の2点を行った。 1.大脳皮質損傷時におけるCSPG合成酵素群の発現の解析およびOASISの標的遺伝子の探索 2.In vitro系を用いてのOASISの標的候補遺伝子の発現解析 最初にOASISノックアウトマウスを用いて、大脳皮質における糖鎖の発現分布を免疫染色により比較検討した結果、特定の硫酸化糖鎖を認識する抗CS56抗体の染色において、野生型と比べOASIS KOマウスでは顕著な染色性の低下が認められた。CS56抗体は硫酸化されたコンドロイチン糖鎖を認識することから、OASIS KOマウスのCSPGは硫酸基の修飾に異常が認められる可能性が示唆された。従って、次にCSPGに硫酸基を供与する硫酸基転移酵素群の発現の差をRT-PCRにより検討したところ、大脳皮質損傷時ではC6ST1の発現上昇が認められるが、OASIS KOマウスでは発現の抑制が認められた。また、脳内に存在するプロテオグリカンのコアタンパク質の発現量には変化が認められなかった。さらに、OASISをノックダウンしたC6glioma細胞においてもvivoと同様にC6ST1の発現低下が認められた。以上の結果より、OASISはアストロサイトにおいてC6ST1の発現に関与し、CSPGの糖鎖修飾を調節している可能性が考えられる。大脳皮質損傷時においてCSPGの糖鎖は神経再生を阻害する因子として知られることから、OASISによる糖鎖制御機構の解明は、神経再生の一助となりうると思われる。
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