研究概要 |
当該研究は,申請者らが見出した骨髄間葉系幹細胞(hMSCs)が虚血性神経細胞死抑制し,神経細胞を保護すること,そしてその機構としてのhMSCsが脳内に局在する免疫細胞であるマイクログリアと相互作用し,抗炎症作用を介して神経細胞死を抑制しているという動物実験による結果を更に詳細に解析することを主目的としている.当該年度は,hMSCsとマイクログリアの相互作用をマウスマイクログリア系細胞株BV-2とhMSCsの混合培養系システムを用いて明らかにした.BV-2はインターフェロンγ(IFNγ)を暴露した時,酸化ストレスメディエーターの一酸化窒素(NO)産生,炎症性サイトカインのインターロイキン1β(IL-1β)および腫瘍壊死因子α(TNFα)産生を増加し,いわゆる古典的活性化様の変化を示した.一方,インターロイキン4(IL-4)を加え培養した時,BV-2は抗炎症性の成長因子インスリン様成長因子-1(IGF-1)産生,Ym1やCD206(マンノースレセプター)の増加を認め,代替経路型活性化様の変化を示した.hMSCsはBV-2のIFNγ暴露によるNO産生を細胞数依存的に抑制した.IL-1βおよびTNFαの産生もまた低下したが,その応答はIFNγの有無に関係なく低下させた.一方,hMSCsはIL-4存在下におけるBV-2のIGF-1の産生もまた抑制した.このことは,hMSCsは抗炎症作用というより免疫調節作用に寄与している可能性を示唆した.加えて,同実験を変性hMSCsおよびヒト線維芽細胞を用い行ったところ,変性hMSCsでは上記のような作用が全く認められず,ヒト線維芽細胞では,hMSCsに比べ有意に低い応答であった.これはviable hMSCsが本作用に重要であることを示唆する.
|