研究課題/領域番号 |
22791358
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
矢ヶ崎 有希 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90392422)
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キーワード | 難治性疼痛 / ガンマナイフ / 下垂体 |
研究概要 |
臨床では癌性疼痛患者において、下垂体へのガンマナイフ(GK)照射により鎮痛効果が得られることが確認されているが、その鎮痛効果発現メカニズムは不明な点が多い。本研究では、ラット下垂体へGK照射を行い、行動学的・組織化学的・分子生物学的に解析し、ガンマナイフの機能的な効果の機序を明らかにすることを目的とする。 本年度はIntactラットの下垂体へ120Gy(臨床治療時のUnit Energyと同等)のGK照射を行い、行動解析及び組織解析を行った。 ・行動解析 予備実験において、180Gy照射(臨床治療時より高線量照射)ラットでは照射1週間後にActivity Testにおいて活動量の低下、Open Field Testにおいて移動距離の低下が見られたが、120Gy照射ラットではこのような行動変化は見られなかった。またGK照射後、経時的にPaw Flick Test、Von Frey Testを、照射3か月後にFormalin testを行ったが、GK照射による疼痛反応の変化は認められなかった。Intactラットの治療線量(120Gy)でのガンマナイフ下垂体照射は大きな行動変化を引き起こさない事が明らかとなった。 ・組織解析 GK120Gy照射3か月後にラットを還流固定し、凍結切片を作製した。GK照射により下垂体の前葉と中葉で萎縮が認められ、前葉ではGH産生細胞とPRL産生細胞の細胞数の減少と形態変化が生じていることが明らかとなった。前葉のGH産生細胞、PRL産生細胞、中葉のMSH産生細胞でGKによる影響を受けやすいことが示唆された。 癌性疼痛は炎症を伴う腫瘍の浸潤が関与しているので、今後は炎症性慢性疼痛モデルを用いてGK照射を行い、鎮痛効果発現メカニズムの解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ラット下垂体へのガンマナイフ照射方法を確立し、行動解析・組織解析を行った。また、ガンマナイフ照射に対する感受性が、下垂体の細胞種によって異なるという新しい知見も得ることが出来た。以上より、おおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、疼痛モデルラットへGK照射を行い、鎮痛効果が得られるかをPaw Flick Test、Von Frey Test、Formalin Test等で検討する。臨床では照射後、48時間以内に90%以上で何らかの鎮痛効果が得られることから、照射2日前後に着目し実験を行う予定である。 また、IL1などの炎症性サイトカインが脳室内投与により、鎮痛効果を発現するという知見や、バソプレシン・オキシトシンが鎮痛効果をもたらすという報告が多数されていることから、鎮痛効果発現メカニズムに関して、視床下部のこれらの因子に焦点をあて、解析を行う予定である。
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