近年の放射線治療技術の進歩から、悪性神経膠腫に対しても局所高線量による治療が注目され、治療成績の向上が期待される。しかしこれらの治療後に、MRIなど画像上、造影域の増大をきたした場合、腫瘍の増大・再発や放射線壊死・治療による影響、または一過性増大などの病態診断や鑑別が重要な問題となる。本研究では、硼素中性子捕捉療法の治療立案のために考案したアミノ酸(フェニルアラニン)をトレーサーとした^<18>F-BPA-PETを用い、脳腫瘍治療後の病態解析における有用性を示し、さらに治療後の複雑化した組織・病態に対し、この検査結果が示す意味を病理学的に検証することを目的とした。 昨年度は、培養細胞に対し、F-BPA溶液を用い、硼素濃度測定・免疫染色(抗LAT-1)を用いて、細胞レベルでの硼素の取り込みを解析した。この結果をもとに、本年度は担脳腫瘍・皮下腫瘍モデルを用いた、F-BPA投与による硼素濃度測定を継続し行った。臨床例に関しては、引き続きこれまでに実施したPET症例に対して、検査結果・検査時期と病態との相関を調査し、治療から評価までの最適期間を解析した。また摘出腫瘍組織に対し、免疫組織学的検討を行い、F-BPAの集積に関与する因子・特徴を解析した。昨年度の免疫組織学的検討では、臨床例でのPET検査の結果を反映し、悪性髄膜腫での高集積及びBPA-PETでの集積が悪性度に依存する可能性を示した。本年度はこれらの結果を踏襲し、悪性度が低いと予測される神経膠腫、摘出手術を予定する転移性脳腫瘍などに対しても、初回診断時点の^<18>F-BPA-PET検査を実施し、摘出腫瘍に対し免疫組織学的検討を行った。また、病態解析を要する例及び経時的変化の評価が可能な初回診断時施行症例を重点的に蓄積し、一回の検査のみで得られる単独の検査結果から病態解析を試みるとともに、複数回実施例での経時的変化の有用性を示した。
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