FGFシグナルは骨格形成に必須の役割を果たしていることが知られている。FGFの下流では主にSTAT1とERKがシグナルを伝達している。しかし、ERKに比較してSTAT1の果たす役割には未知な点が多い。そこで、骨格形成において中心的な役割を果たすFGFであるFGF18のノックアウト(KO)マウスとSTAT1 KOマウスを交配し、STAT1に特異的な機能を明らかにすることを試みた。FGF18の単独KOマウスは顕著な骨格形成異常を示し、出生直後に死亡する。一方、STAT1の単独KOマウスは骨格形成に顕著な異常は認められない。交配により、FGF18 KO ; STAT1ヘテロもしくはダブルKOマウスで下顎の形成が著しく阻害されている個体が観察された。この表現型はFGF18単独KOマウスでは観察されないため、STAT1特異的な機能が下顎骨の発生に重要であることを示唆している。ただし、表現型にばらつきが認められたため現在C57BL/6背景に戻し交配を行っている。 我々はFGF18シグナルを調節する分子として、膜蛋白質であるCfrを同定しており、CfrがFGF18に結合してFGF受容体を介したシグナルを強めていることを発表している。しかし、Cfrはゴルジ体蛋白質であるという報告もある。そこで、Cfrの様々な変異体を作製し、その細胞内局在とFGFシグナルにおける機能の関連を解析した。その中で、Cfrの細胞外領域をGPIアンカーシグナルに融合させることにより、GPIアンカーで人為的にCfrを細胞表面に発現させることに成功した。その結果、Cfrは細胞表面でFGF18に結合し、そのシグナルを強めていることが明らかになった。今後はCfrによるFGFシグナルの増強が、STAT1の活性に及ぼす影響について解析を進めていく。
|