申請者らはこれまで、骨芽細胞におけるRANKLの細胞内挙動とその制御機構に着目した分子論的研究を進めてきた結果、骨芽細胞に発現するRANKLは細胞外へ向けたシグナルを発生するだけでは無く、骨芽細胞の細胞内に向けてリバース・シグナルを発生し、種々の細胞応答を鬆起することを見出してきた。本研究では、申請者らが新規に見出した、このシグナル伝達経路に関与する分子群を同定すると共に、シグナル伝達を阻害した場合の影響を生体レベルで評価することによって、RANKLリバース・シグナル伝達経路が骨粗鬆症に対する新規治療標的となり得るかを検証することを目的としている。平成22年度は主として細胞内の分泌型リソソームに蓄積されているRANKL分子の、細胞膜表面への放出を制御するシグナル分子機構を中心に解析を加え、mTORC2の活性化を介してRacl/Cdc42-IQGAPI-CLIP170という一連の微小管足場形成機構が機能することが見出された。平成23年度は、RANKLリバース・シグナルが骨芽細胞の骨形成活性に与える影響を中心に検討を進めた。RANKL細胞内ドメインにSH3ドメインを有する複数の分子が結合し、PI3K-Akt経路およびMEK-ERK経路を活性化することで、mTORC1の活性化が生じることが明らかとなった。これらのシグナル経路の下流ではALPを始めとして複数の骨形成関連因子の発現上昇が観察され、骨芽細胞におけるRANKL逆シグナルは、骨形成促進に機能していることが明らかとなった。以上の結果を総合すると、このシグナル経路を活性化させ得る分子は骨形成促進薬として機能することが想定され、今後の創薬標的の1つになると考えられた。現在論文投稿の準備を進めている。
|