研究課題
脊柱靭帯骨化症では内軟骨性骨化過程により骨化巣は形成されるが、組織学的には靱帯組織と骨組織の間に存在する骨化前線における細胞の分化が重要と考えられる。本研究では、ヒト脊柱靭帯骨化症(後縦靭帯、黄色靭帯)の手術時に採取した靭帯組織について、組織学的、免疫組織化学的検討を行った。また採取した靭帯から遊走させて得た培養靭帯細胞の生物学的特徴について解析した。採取した黄色靱帯は組織学的評価として、骨化靱帯を脱灰固定して薄切標本を作製し、β-catenin、Osterix、Runx2、Sox9、TGF-βの免疫組織化学的局在を観察した。また、骨化靭帯よりExplant法にて細胞を遊走させて得た培養細胞は、5継代培養して実験を行った。機械的ストレスはFlexercell FX-3000を用いて行い、ストレス反応時間は0、6、12、24時間とした。この際の各因子の発現について免疫組織化学染色およびreal time RT-PCR法にて評価した。その結果、骨化前線部においてβ-catenin、Sox9の発現は間葉系細胞、増殖期軟骨細胞に強陽性であった。Runx2、TGF-βは増殖期・肥大軟骨細胞に広範に発現していた。培養骨化靱帯では、β-catenin、Sox9、Runx2のmRNA発現量は非骨化靱帯と比較して有意に高値であり、機械的ストレスを加えることで発現量はさらに上昇していた。以上より、骨化前線部の軟骨細胞の分化・誘導は成長因子や転写因子を介して行われており、骨化の調節・制御に大きな役割を果たすと考えられた。さらにこれらの因子は骨化靱帯において発現量が高値であり、このことが靭帯骨化形球の背景として存在することが考えられた。また、機械的ストレスは靱帯細胞の骨化誘導因子の発現を増強させ、この異常発現状態が持続することは骨化形成に重要な因子の1つであることが示唆された。
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Journal of Orthopaedic Research
巻: (in press)
Arthritis Research and Therapy