研究概要 |
腰椎椎間板ヘルニアの自然退縮機序について、近年アレルギー疾患の炎症反応のイニシエーターとして注目されているサイトカインTSLPが、炎症細胞の遊走に作用していることに着目し、椎間板ヘルニア病態におけるTSLPの役割について研究している。 そこで本研究の目的は、TSLPがどのような機序で椎間板組織から発現し、ヘルニアの自然退縮にどのような機序でどの程度作用しているかについて解明することである。 Iマウスから採取した椎間板臓器に対してTNF-α・IL-1βの刺激をすることで培養上澄中にTSLPの産生が誘導されるが(Arthritis Rheum.58 : 3510-9, 2008)。同時にTGF-βを加えることでこの産生が著しく抑制された。 IIこれまでにTSLPの産生は主にNF-κβにより制御されていることが報告されている、そこでTGF-β/smad経路と、NF-κBがどのように相互作用しているか検討した。 1.マウスから椎間板を採取し、TNF-α,TGF-β,Smad3の阻害剤であるHTSで刺激を加えて、6.12.24.48時間でサンプルを回収し、リン酸化smad3・NF-κBシグナルの発現について免疫染色とウェスタン・ブロッッティング法を用いて解析したところ、HTS刺激でもTNF-αと同様にNF-κBシグナルの発現が誘導されることを明らかにした。 2.入の手術症例から採取したヘルニアサンプルを免疫染色して、全てのヘルニア患者においてTSLPおよびNF-κBの発現があることを解明した。 以上の結果から、椎間板組織に恒常性に発現するTGF-βとがヘルニア発現時の炎症の惹起に深く関与することを推測し、下記ジャーナルに投稿中である。
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