研究概要 |
(1)軸索伸長に関する細胞内シグナルの検討:ラット小脳顆粒細胞を用い。各オリゴ糖10μg/mlでcoatしたスライド上に5.0×106個/mlの濃度で顆粒細胞の培養を24時間行い、PKC,リン酸化PKCの発現を検討した。結果:HAオリゴ糖は軸索伸長に対する作用を有さず、PKC,リン酸化PKCに変化はみられなかった。(2)グリア細胞への効果:ラットアストロサイトおよびミクログリアを精製、培養し、各オリゴ糖10μg/mlでcoatしたスライド上に5.0×106個/mlの濃度で各細胞の培養を24時間行った。培養上清中のTNF-α,IL-1βおよびIL-6を定量した。結果:HA4糖は有意にミクログリアのTNF-α分泌を抑制した。(3)オリゴ糖の至適投与量、時期、投与法の決定:ラット脊髄損傷後モデルに対して急性期くも膜下投与で下肢機能改善効果を認めたHA4糖の効果を、急性期もしくは損傷2週間後、経くも膜下投与もしくは経口投与と、異なる4種類の投与時期および投与経路で再度検定した。結果:急性期くも膜下投与のみで下肢運動機能の回復が再現されたが、亜急性期クモ膜投与、急性期経口投与、亜急性期経口投与では下肢機能の回復はみられなかった。(4)霊長類に対する効果の検討:ラット胸髄損傷モデルで再現性の高い損傷モデルの確立およびHA2,4糖投与による下肢機能の回復が再現された。これを霊長類に投与すべく、サル胸髄損傷モデル作成に着手した。結果:ニホンサル脊髄損傷モデルは岡崎生理学研究所プロトコールに準じ作成した。従来のラット脊髄損傷モデルと同様、急性期の神経障害の程度に一定のばらつきがあるものの、40例の損傷モデル作成により(1)損傷翌日の下肢筋力がない(2)受傷後12週までの経時的両下肢機能回復および膀胱直腸機能回復を満たすサル胸髄損傷モデルの安定供給が可能となった。
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