現在の日本では約10万人以上の脊髄損傷患者が麻痺を抱えたまま生活を余儀なくされており、毎年5000人以上の患者が脊髄損傷を来たし、発生率は若い世代で高く個人と社会に与える肉体的、精神的、経済的負担は極めて大きい。しかし近年の研究では損傷神経を再生する試みが幾つかなされている。NT-3やニューロトロフィンなどの神経栄養因子の存在やコンドロイチン硫酸(CS)、Nogo、MAG、Socs3などの神経再生抑制因子の発見に伴い脊髄損傷の病態解明が進んできており、臨床応用への展開が期待される。KSはN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)とガラクトースの2糖が繰り返すグリコサミノグリカンである。当教室では、5D4というKSのdisulfationを認識する抗体が脊髄損傷後、および脊髄腫瘍の悪性度に関与しているという結果に着目した。そして、GlcNAc6ST-1ノックアウトマウスにおいて5D4の発現が消失するという事実より、glioblastoma cell lineであるLN229を使用し、現在のところGlcNAc6ST-1、β3GlcNAcT-7、KSGal6ST-1をノックダウンし、western blotにより5D4、BCD4の発現をみている。今のところGlcNAc6ST-1をノックダウンすることにより5D4の発現は低下し、遺伝子レベルでは、Real-time RT-PCRにより測定したところβ3GlcNAcT-7、KSGal6ST-1にmono-directionalな影響(down-regulation)を認めている。 今後その遺伝子発現(合成酵素)、cell viabilityの違いを測定するこでGlcNAc6ST-1の役割についてより認識を深めていく。
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