変形性関節症の発症、進行には半月板変性などに起因する異常なメカニカルストレスの亢進・負荷が関係しているが、関節軟骨においてメカニカルストレスにより誘発された分子の発現動態および変形性関節症との病態関与は殆ど解明できていない。本研究では、発生過程でSox9の上流に位置し、生後における関節軟骨で膜チャネルタンパクとして機能するTRPV4に着目した。本年度はTRPV4のノックアウトマウスおよび野生型マウスを用いて変形性膝関節症(OA)モデルを作製し、組織学的・分子生物学的検証を行った。その結果、術後3カ月までの段階においてTRPV4ノックアウトマウスのOAが野生型に比べて進行していることが分かった。次に、ラットOAモデルを用いてTRPV4特異的薬理活性剤を膝関節に投与し、溶媒のみを投与した群と比較した結果、薬理活性剤を投与した群においてOAの進行が抑制されるという結果を得た。そこで、TRPV4を介した軟骨細胞外マトリックスの動態に着目し、コラーゲンおよびアグリカンの転写を制御するSox9の発現動態をSox9-3'EGFPマウスを用いてリアルタイムに可視化し、TRPV4薬理活性剤投与に伴う蛍光強度変化を評価した。その結果、マウス膝関節にex vivoにてTRPV4薬理活性剤を投与すると、一旦EGFPの蛍光強度が増加、即ちSox9の転写活性が上昇するという結果を得た。以上のことから、TRPV4を介したSox9の発現がOAの病態に関与している可能性が示唆された。
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